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作者 くらじ ななえ

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おはなし:その1
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  はんますとほいとやがれんげ畑のあぜみちをおさんぽしていると、どこからか、サイレンのような泣き声がしてきました。

「ギャッオー、ギャッオー、うウェ〜ン、うウェ〜ン」
「ギャッオー、ギャッオー、うウェ〜ン、ウェン、ウェン」


ア、あの派手な泣き声は、ジローくんだ。
いったいどうしたのかな。
またいたずらをして、パパにしかられたのかな。
とにかく行ってみよう。
ウン、行ってみよう。


はんますほいとやは、いそいで回れ右をすると、とうもろこし畑とキャベツ畑の間の細道に向かってかけだしました。走るたびに、草のにおいにまじって、よもぎの葉のにおいがぷんとします。
「ねえほいとや、あとで、よもぎの草もちをつくろうよ。よもぎがとってもいいにおい」

「ホントだね。きょうのおやつは草もちだ。
オット、その前にジローくんを助けなきゃ。
ところではんます、ぼくはきなこもちにするよ」

「ぼくは、あんころもち。
ワーイワーイ、くさもち、ワーイ」
ふたりは、ジローくんのおうちの裏木戸のすきまをヨイショとこえ、栗の木とプラムの木の下を抜けて、中庭にまわりました。ぶどうのたなの下で耳を澄ますと、泣き声がよく聞こえました。


どこで泣いているのかな。
泣き声は、ジローくんの細長い家の右側から聞こえてきます。ほりごたつとソファのある茶の間だよ、きっと。

はんますと
ほいとやは、ジローくんの家の台所にいくときは、中庭にある井戸の左側からまわりますが、ほりごたつの茶の間に行くときは、井戸のとなりにある物置小屋の右側をとおるのでした。物置のそばをタタタっと走り抜けると、ちょっとこけのにおいがしました。

はんますほいとやは、じんじんぐものすをじょうずによけながら、茶の間の縁石にとびのりました。
部屋の中をそおっとのぞきます。
ジローくんがほりごたつの前で、顔をまっ赤にして、泣いていました。




 「ジローくん、どうしたの」
「タローくんとけんかでもしたの。それともだれかにしかられたの」
ふたりは、おそるおそるたずねました。

「こッこッで、ヒックヒック、ピョンピョンして、エッエッエッ、たら、ウッウッウッ、ぶつけたの。
ウウェーン、ウェンウェン」
よくみると、ジローくんの左のおでこには、おーきなタンコブがひとつ。てらてら光っていました。


「あーあ、ソファでピョンピョンして、こたつの天板におでこをぶつけたんだね」
「すぐに氷で冷やさなきゃ」

「ママはいないの」
「ママは、ヒックヒック、おつかい」

「たろーくんは?」
「パパをよびに行った…、フウェーン」

はんますほいとやは、いそいで冷蔵庫の前まで、超特急でダッシュしました。けれど冷凍庫は、上の段。
はんますほいとやには、どうしてもとどきません。
ほかに冷やせるものはないかしら。


そうだ、氷がないときは水でもいいって、キャンプのとき先生がおしえてくれたじゃない。そうだったね。
流し台に二人はよじのぼると、力を合わせてすいどうのじゃぐちをひねりました。ザアッと冷たい水がいきおいよくでてきました。いそいでタオルをぬらし、ふたりはタオルの両はしをしぼって、一生懸命おしぼりをつくりました。


「ジローくん、さあこの冷たいタオルで、
タンコブを冷やして!」

そのときです。
「パパッ、こっちだよ」

タローくんの大きな声がして、廊下をドスンドスンとひびかせながらタローくんとジローくんのパパがやってきました。
タローくんとジローくんのパパは、歯医者さんです。廊下のむこうがわが、歯医者さんのお部屋なのでした。
パパは、歯医者さんの白衣のままで、茶の間にやってきました。頭の上には、穴のあいた丸い鏡をのせています。
パパがくればもう大丈夫、
はんますほいとやも、ホッとしました。


「ジローくん、茶の間のソファでピョンピョンしたらいけないって、いつもママにいわれてるでしょ。どうしてそんなことしたの」
「あの〜、ジローくんのおじさん、それよりもコブがひどいから、氷で冷やしてあげてください」
はんますがおねがいします。


「やあ、はんますほいとや、きてたの。ゆっくりしていきなさい」
おじさんはまるでなにごともなかったように、のんびりと二人に声をかけました。



  「やあ、はんますほいとや、きてたの。
ゆっくりしていきなさい」
おじさんはまるでなにごともなかったように、のんびりと二人に声をかけました。


「おじさん、それより、ジローくんのコブをみてよ」
「ああそうだったね、ジローはつよいからこのくらいのコブ、へいきだろ」
パパのことばに、ジローくんは、ますますひどく泣き出しました。

「パパあ、早くジローのタンコブ、なんとかしてよオ」

タローくんまでひっしでおねがいします。
ヨシ、といって台所にむかったおじさんが長くて白い白衣のすそをひるがえしながら手にしてきたのは、氷のはいったひょうのうではなく、ナンとみどりいろの大きなドロップでした。
ドロップなんかどうするのかな、だれもが思いました。


おじさんは、
「ほーら、ジローくん」
といいながら、泣きじゃくるジローくんのお口に、メロン味のドロップをぽおんとほおりこむと、あっけにとられるみんなをのこして、さっさとお仕事のおへやに戻ってしまいました。
なんてことでしょう。

はんますほいとやは、あきれてしまいました。こうなったら、ママに言いつけるしかありません。



ところがママがおつかいから戻ったころには、ジローくんはすっかり元気になり、
はんますほいとや、タローくん、ジローくんの四人で、庭でおにごっこをしていたのです。

さてその晩、おふろからでたジローくんは、いいことを考えつきました。タンコブがいたくなってきた、とパパに言ってみたらまたメロン味のドロップをもらえるかもしれない、と思ったからです。

ジローくんは、一度でいいから、ドロップをなめながらねむってみたかったのです。ママにいったらぜったいしかられそうな予感がしたので、パパにそおっと耳打ちしました。



「あのさあ、パパあ。ジローね、またタンコブいたくなっちゃった」
するとパパは、よーし今日だけだぞ、といって、こんどはイチゴ味の大粒ドロップをジローくんのお口にポンと入れてくれました。


いいのかなあ。
(つづく)

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