歯周病菌は、嫌気性といって酸素を嫌う性質を持っています。だから歯周病菌のつくる歯垢は、酸素の届かない歯周ポケットの奥深くに進行していって、歯を支えている歯肉や骨などの組織を破壊してしまいます。そうするとまず歯肉が腫れる「歯肉炎」が起こり、さらに進行すると、歯がグラグラとして抜け落ちてしまう恐ろしい歯槽膿漏、つまり「歯周炎」になってしまうのです。
症状は、黒い歯石が歯根のほうに増えてきたり、歯磨きのとき血や膿が出る、口臭などです。歯周病が中高年以降に多いといわれるのは、免疫力が落ちてくるため。若くても雑な歯磨きをしていると、歯垢が残ってしまい歯周病予備軍になってしまいますよ。
歯周病と虫歯の原因菌は別ものですから、いま虫歯があってもなくても、歯周病になる可能性は誰にでもあると知っておきましょう。
歯肉炎の段階ならば、歯磨きをしっかりすることで治せます。さらに進んだ場合でも、歯科医で歯磨き指導を受け、歯周ポケットの奥の歯石を取り除くなどの処置をすることで、治るケースもあります。食生活が乱れていて栄養バランスが悪い人、ヘビースモーカーの人は歯周病が治りにくいので注意を。噛み合せが悪くて歯周病になった場合は、噛みあわせの治療が先決です。
歯周病が進んだ人では、失われた歯槽骨部分をメンブレン(膜)で被い、歯根膜や歯槽骨などを新たに再生させる「GTR法(組織再生誘導法)」と呼ばれる手術を行います。膜は吸収性と非吸収性があります。さらに最近では「エムドゲイン」と呼ばれるタンパク質の一種を失われた歯槽骨の周囲に塗布し、歯周組織を再生させる手術法もあります。これまで歯周病治療というと進行をストップさせるメインテナンスが主流でしたが、最近ではGTRやエムドゲインなどで積極的に歯周病を治そうという患者さんが増えています。
上顎中切歯歯肉は発赤腫脹し、正中離開も認められる
左上1番近心に垂直性の骨吸収がみられる
プラークコントロールが行きとどきひきしまった歯肉。
正中離開がなくなり閉じた中切歯
左上1番近心垂直性骨欠損部にわずかに骨の再生を認める
虫歯ではないのに、冷たいものがしみる、歯みがき後の水や冷蔵庫から出した牛乳でキーンと歯がしみる、自転車で走ると風がしみるといった症状を感じたことはありませんか。こんな症状があると「知覚過敏」が疑われます。
原因は、歯のエナメル質が削られ象牙質が露出したため。歯周病で歯根が露出したり、硬い歯ブラシでゴシゴシと力まかせに磨いているとエナメル質が削られて、象牙質が露出してしまいます。象牙質の象牙細管には神経が通っているためこの部分が痛みを感じるのです。噛み合わせが原因でも象牙質は露出します。
治療法は、噛み合わせチェックの後に、露出した象牙質にフッ素バニッシュなどを歯科医院で塗布してもらいます。適切な歯ブラシによる正しい磨き方をマスターしてから、知覚過敏用の市販の歯みがき剤で磨きます。それでも痛みが消えない時は、プラスチックを詰めたり神経をとる場合もありますが、当院ではフッ素バニッシュ塗布で、ほとんどの方の症状が消退していますよ。
●エナメル質=痛みは感じない
●セメント質=神経繊維がむき出しなので、しみたり、痛んだりする。
象牙質や歯根がしみたり、痛んだりする。